おととい、伊是名村で行われた牧場誘致計画を巡る住民投票。結果はわずか1票差で、誘致賛成票が上回りましたが、反対票とほぼ同数だったことは計画を推進してきた村に大きな衝撃を与えました。
島の活性化と、環境問題に揺れる住民たちの思い、そして今回の結果の意味についてまとめました。
モズクの収穫が最盛期を迎えている伊是名村。豊かな海に育まれた島で、おととい、離島の環境問題に一石を投じる出来事がありました。
「賛成票が461票」「反対票が460票」
開票結果を淡々と記録する反対派住人と、戸惑いを隠せない村長。
諸見さん「大成功」
村長「予想はしてなかったですね。もっと村民の皆さんが賛成をしてくれるだろうとまあ、そういう期待は持っていました。」
問題の計画は黒毛和牛の繁殖と飼育を全国で展開する安愚楽共済牧場を誘致し、内花区の村有地に親牛子牛、合わせて2,800頭余りを飼育する牛舎を建設するというもの。
村は、さらに牧場の糞尿から堆肥を作り、基幹作物であるサトウキビの増産につなげる計画。
村長「財政の状況とか考えるとですね」「どういう圧力があってもですね、私はそれを進めていくと」
計画を、厳しい財政を立て直す切り札と位置づける伊是名村。
しかしー内花区には、ゴミの最終処分場があるほか、大きな川の下流に位置しているため、赤土などの影響で海岸はヘドロ状態。
牧場の反対運動は、こうした、これまでの村の環境行政に不信感を募らせてきた内花区から持ち上がりました。
牧場の建設で、悪臭や、海岸の汚染に拍車がかかるというのです。反対運動が始まった去年の6月以降、計画はこう着状態。
村長「それじゃあ、村民全体としては、どういう風なお考えを持っておられるのかと、それを確認したいと」
住民投票は、村が提案したもので、こうした問題で自治体側から住民投票を提案することは極めて異例です。
村民「私は私の気持ちを投票しにきました。」
村民「汚染問題もあるから、反対のアレでやってますけど」
村民「ちょっと複雑な気持ちもあるんですけど、やっぱり島のためになるんであれば投票はしなくてはいけないということで」
村民「作ってあれしたら上等なんかねー、またその反面、いま言う内花地区が公害もあるしね、どうしたもんかねーと思っているんですよ。」
村民「自分たちの子どもたちのためにね、ずっとずっと残したいなと思って」
諸見さん「必ず勝利できると信じてます。村民を信じてですね」
最終投票率は71.36%。村民の関心の高さを示す結果となりました。
村議会も誘致決議を可決するなど、これまでは強気で計画を推進してきた村にとって結果は予想外のものでした。
村長「結果としては非常に厳しい結果となりましたので」
村長「村民の皆さんがほぼ同数で、賛否を表明したということは、これは、真摯に受け止めて今後も対応については、慎重に取り扱いをしていきたいと」
一方、内花の住人たちは、今回の結果は、島の環境汚染に、区民だけでなく、多くの村民が目を向け始めたためだと説明します。
「勝ったつもりでいます、それをどう判断するかは村長次第ですけどね」「環境守るための村民は、僕は信じていたから」「こう、運動進めた結果で、あのこれだけでたと僕思います」
安愚楽共済牧場は「意外な結果で、今後の村の判断を待ちたい」とコメント。
一方、今回の結果を、専門家は次のように分析します。
「おそらく村長はですね、住民投票にかけて、議会でも可決、住民投票でも圧倒的な賛成を得て、それでこの牧場誘致を断行しようと思ったと思うんですね。」
「村長の意図したことが裏目に出てしまった」
「1票差(で賛成多数)の場合にですね、その結果を尊重して、建設にですね、そのまま推進していくことができるかどうかとなると、私はこれは疑問ですね。やはり半数の住民が反対という政策を実行するにはですね、まだまだ時間をかけて議論をするべきではないかなと思いますね」
「自分たちで自分たちの環境を守ることに村民が立ち上がった、ある面ではこれも民主主義の姿として、住民自治のすがたとして立派じゃないかなと思いますね。それで環境問題のあり方ですね、それに一石を投じた牧場誘致問題じゃなかったかなと思います」
「今回の投票は、島の環境は自分たちで守っていこうという住民たちの思いが日に日に高まっていることを如実に示す結果となりました。果たして牧場は必要なんでしょうか。村は今後、あらゆる選択肢を視野に住民たちと同じテーブルについてその答えを探っていく必要があります。」
当初は、反対派はごく少数と見られていた、この問題。内花区の住人たちの切実な訴えの成果も、もちろんですが、環境問題に対する関心は、こうした離島においても確実に高まってきていることを示す結果でした。
今後の村の対応が注目されます。