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きょうは陸上自衛隊が沖縄の本土復帰の年から行ってきた離島の急患空輸についてお伝えします。

これまでの輸送回数は7400回、ほぼ2日に1回のペースで、離島医療にとっても欠かせない存在となっています。去年には墜落事故も発生し、運用体制の見直しも急がれる中、その過酷な任務に岸本記者が密着しました。

中村誠カメラマン「徳之島の上空です。陸上自衛隊CH47がこちらで墜落したものと思われます。周りには機体の破片が散乱しています」

秋山和代記者「4人の自衛官の遺体が今、那覇港に到着しました。人命救助に向かったはずの4人の無言の寄港に、遺族は悲しみを隠せません」

緊急患者の搬送に向かった101飛行隊のヘリコプターが霧で視界が悪い中、徳之島の山肌に激突し墜落した事故から一年。

遺族代表・坂口恵子さん挨拶「私ども遺族にとりまして、突然に、本当に突然にかけがいのない、また何ものにも変えがたい大切なわが夫、わが子、わが父、あるいはわが兄弟を失うという悲しみは、言葉には言い表すことが出来ないものがございました」

離島の人命救助の最前線に立ってきた陸上自衛隊第101飛行隊。

2005年には浦添総合病院が救急ヘリの運用をスタートし、去年は名護市の北部医師会病院も事業を始めたこともあって、101飛行隊の出動回数は減少傾向にあります。

しかし、沖縄の離島全てと鹿児島の離島の一部を含む東西1000キロ・南北500キロの広大な範囲をカバーし、危険が多い夜間を含めて、完全24時間態勢を取っているのは101飛行隊だけです。

取材を始めて2日目の深夜。飛行隊指揮所に急患空輸の依頼が入りました。

『空輸区間、伊是名へリポートより那覇。入院先病院、南部徳州会病院。患者55歳男性、転落事故』

歩行中、3メートルの高さから川に転落し、足の骨を骨折した模様です。101飛行隊7434回目の出動です。

『出血はあるんですか?』『聞いてはいないが、あると思ってて下さい!』

気象情報によると、伊是名島の上空にはちょうど雲がかかり、難しい着陸が予想されます。

南部徳州会病院から当直の医師と看護士が到着。CH47はまもなく那覇空港を飛び立ちました。機体から街の明かりはほとんど見えません。

操縦士・吉田雄次一尉「真っ暗闇。どこが海でどこが空なのか分からない。計器を見て飛ぶんですけど、その中で錯覚に陥りやすい。星が出てきたら星が海に反射してることがある。(海に)反射しているものなのか、実際の星なのか見分けないといけない」

計器だけを頼りに飛行を続けること30分。伊是名島のヘリポートでは、診療所の医師と付き添いの人がヘリの到着を今かと待っていました。

患者を乗せた帰路。男性は顔面からもひどく出血しています。病院での手術に向け、医師は折れた足の状況を確認。看護士も懸命に応急処置を施します。

一方、那覇空港には、患者を病院まで運ぶ救急車が到着。その3分後、漆黒の闇の中にCH47が姿を現しました。

患者を無事引渡し、飛行隊としての任務はここで終了です。

飛行隊・井上正利一尉「日頃の積み重ねと毎日が真剣勝負ですから、回数というのは関係ない」

飛行隊がこのような夜間に出動する割合は民間病院が昼間のヘリの運用を始めた後、急激に増え、去年は全体のおよそ6割にも達しています。

第101飛行隊・印口岳人隊長「離島医療の問題が解決されていけば、我々の任務も序々になくなっていくとは思う。ただ、今地域の特性上、当分我々の任務は残っていくと認識しています」

本来、災害派遣である自衛隊の急患空輸が日常化している今の現状は島だけで医療が完結できず、常に医師不足の状態にある沖縄の離島医療の問題を象徴しています。

岸本さん、全く気の抜けない過酷な任務ですね。

岸本記者「その通りです。しかも101飛行隊はこの急患空輸だけが仕事ではなく、南西諸島での輸送支援の任務もまた別にありますから、非常に厳しい勤務状況にあります。また、あくまでも災害派遣ですから、まず県からの要請がないと自衛隊も動けない。ですから急患輸送の依頼を受けてからヘリの離陸までおよそ1時間程度かかってしまうという問題点もあるります」

救急患者にとって1時間というのは、生死にも関わる大切な時間ですよね。

岸本記者「本当は15分以内に到着できれば、患者が救われる可能性も格段にあがるんです。ですから、その県からの連絡体制を改善できればという声もあるんですが、でも、自衛隊の急患空輸は先ほども言ったようにあくまでも非常時の災害派遣ですから、そこに完全に頼りきってしまうのは大きな問題なんです。やはり県が中心になって、離島の医療体制を根本的にしっかりと立て直す必要があると思います」