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今週からいよいよ環境アセスの本調査に入った辺野古の基地建設。これまでも多くの手続きの不備が指摘されて来ましたが、まだ位置すら決まっていません。政府は提示しているのはこの形ですが、県と名護市は、この長島にかからない100mでいいから沖合にとこだわっています。

その程度の移動で、はたして騒音は変わるのか、さらに地元の人々は本当にそれを望んでいるのかを取材しました。

「普天間の3年以内の閉鎖」と「政府案の見直し」を公約に当選した仲井真知事。それが去年2月、知事は名護市長の求める「沖合修正案」を支持。知事の「政府案の見直し」は「沖合移動」に姿を変えた。

ところが政府が修正に応じないため、知事も環境アセスの方法書を突っぱね、冷戦状態に。

しかし、北部振興事業費の凍結状態の長期化は避けたいと、知事は10ケ月ぶりに政府と交渉のテーブルに着いた。

仲井真知事「騒音、生活環境に与える影響を考えると、可能な限り沖合へ出すことが必要」

石破防衛大臣「もっと沖に出すとなると、藻場はどうなる、ジュゴンはどうなるということに必ずぶつかる」

場所についての議論は平行線のまま。でも「意思の疎通は図れた」と、政府は北部振興年間100億円の凍結を解除した。

キャンプシュワブ周辺の海。基地の建設予定地でもあるこの海域では、潜り漁が行われている。宜志富さんは、中学生のときから銛で魚をとってきた。海を埋めないでほしいという思いは当然ある。

宜志富紹司さん「気持ちは『こっちにできてしまうんだ』というのはある。でも基地ができれば、自分たちの子どもを楽させてあげられるかなと考えてしまえば、将来的には作った方がいいのかなと考える時もある」

容認はしていても、沖合にずらす話は納得できないという。

宜志富さん「沖に出したら何のメリットがあるのかな。専門家でもないけど、90m変えただけで騒音って変わるのかな。変わらなければ、そのままの状態(政府案)が自分はいいと思う」

同じ潜り漁をしている仲村さんは最近大型の船を買った。将来はソデイカ漁に移行するつもりだ。

ボーリング調査の攻防では、反対する市民を蹴散らす国側の警戒船「愛華丸」の船長として恐れられる存在だった。

仲村善吾さん「娘に、お願いだから愛華丸の名前変えてってまで言われたもんな。新聞やニュースに出るでしょ。あの船は二人の娘の名前付けてるから。やっぱり心は痛いよ」

今は国の作業より、イカ漁に集中したいという仲村さん。娘たちを遊ばせた長島は残してほしいという。

仲村さん「だって100メートル移動って言ったら、長島も全部つぶれるでしょう。そうしたら余計環境破壊じゃないの?だから名護市が言ってる意味がわからん。自分たち漁民として」

実際に100メートルの移動で、騒音は変わるのだろうか。近いほうの滑走路の中央から集落までは1500m。仮にそのまま沖にずらすと、集落からは斜めに遠ざかるため、距離は1550メートル。50mしか変わらない計算になる。

日々、ヘリコプターの騒音を測定している宜野湾市を訪ねた。基地政策部では30年にわたって基地周辺の騒音のデータを蓄積している。

辺野古と同じ条件を作るため、普天間の滑走路から1.5キロのところをA地点、さらに100mのところをB地点として騒音を測定してみた。

計測を開始して間もなく飛来したのは連絡機。これは、滑走路から遠いB地点のほうがうるさいという結果になった。2機目はCH46中型ヘリ。A地点は90dbを超えた。

それから立て続けに4回、CH46が回ってくるが、滑走路に近いA地点のほうが毎回やや上回った。

ヘリの飛行コースは当然毎日変わるが、この日午前中に計測した15回の平均ではA地点が86.7db、B地点が86.5dbと、100mでは騒音は変わらないという結果になっている。

少しでも動かせば騒音や危険性が減るという知事の考えについて、基地の騒音に詳しい伊波市長に伺った。

伊波市長「基本的に有効じゃないと思います。音もほとんど変わらない。危険性もそんなに変わらない、100メートルの話ですとね。もっと見落としている点は、米軍は関与していないということです。つまり飛行のあり方とか、米軍の訓練の所要とかを全く議論しないまま、地元と政府が約束しても普天間のようになりはしないかと。普天間は米軍に何の制限もかけ切れていないんですよ」

むしろ、3年以内の閉鎖という公約に力を入れてほしいという伊波市長。一体だれが沖合移動にこだわっているのかと首をかしげる。

そもそも、辺野古区としてV字案の沖合移動を要望した経緯はない。行政委員の中にも、区民の憩いの場である長島を残したいという意見が多いのだ。

この10年、新たな基地建設に反対してきた「命を守る会」では、いよいよ本格化する環境調査に、危機感を強めている。

嘉陽さんは、沖合移動は地元を置き去りにした議論だと憤る。

嘉陽宗義さん「あれは政治。政治と土木屋がつるんでいるからそういうことになるんですよ。なおかつ、儲かるためには海上に、沖にのばして土木工事を増やす」

政治駆け引きや、一部の利権のために利用される建設位置の問題。住民不在の不毛な議論の影に、見過ごされていく問題は大きい。

騒音は全然変わらないんですね。環境を守れとアセスで訴えながら、名護市と県は埋め立て面積を増やしたい。ますますわからないですね。

100m移動で埋まる藻場面積は倍になるという試算があります。また、埋め立て用の土砂もどこかの環境を破壊して持ってくるわけで、少なくとも辺野古区の住民の大半はそれを望んでいない。「地元のため」という言説には、よくよく注意が必要のようです。