Qリポートです。国の重要無形文化財に指定され、およそ300年の歴史があるとも言われる沖縄の伝統芸能「組踊」。その後継者として3年間の研修を終えた第1期生が先日、卒業の舞台に立ちました。
研修生の多くがアルバイトなどで生計を立てながらも、芸の世界に夢を求め、励んできた3年間の集大成。棚原さんのリポートです。
先月28日。組踊・第1期研修生の最後の舞台となる稽古が行われていました。
佐辺良和さん「いよいよですね。はい」
金城真次さん（3年間学んできたものとは？）「組踊に対する心ですかね」
組踊の第1期研修生は、立方と呼ばれる役者が3人と、三線や、笛を演奏する地謡が7人の、合わせて10人。3年前の2005年、国立劇場おきなわが出来た年から研修が始まりました。
研修は週4日、1日2時限。夕方から9時過ぎまで行われ、琉球舞踊や、楽器の他に、着付け、作法、化粧、さらに琉球芸能史を学ぶなど、継承者にふさわしい幅広い見識を身につけるための充実した内容です。
稽古での宮城能鳳先生「やあーやあーではなくてひとつひとつ発音しなさいよ」
さらに講師陣には、立方の宮城能鳳さんや、地謡の城間徳太郎さんなど、「人間国宝」の重鎮達が、直接若手を指導。後継者育成への力が結集しています。
金城真次さん「これ以上の（環境は）ことはないでしょうね。これ（来年3月に研修が）終わるのも寂しいですし、もっと教わりたいことがあるんですけど」
3年間の研修では、組踊の創始者、玉城朝薫の作った5本の演目と「花売の宴」の6作品を学びました。
立方の場合、これら全ての作品に登場する、全ての役を演じなければならず、厳しい研修だったことが伺えます。
円陣を組む出演者達「最後の研修発表会頑張りましょう！頑張ろう！」
今月8日に行われた「研修終了発表会」。3年間の集大成となる最後の公演とあって、事前に無料配布されたチケットはすぐになくる程の人気でした。
組踊「花売の縁（はなうりのえん）」は、金城真次さん演じる、首里の下級士族の妻、乙樽と幼い息子が、やんばるへ出稼ぎに出たまま、行方がわからなくなった夫、森川ぬ子を尋ね、そこで12年ぶりに再会を果たすというストーリー。家族の愛と絆を描いた情愛物として、人気の演目です。
親子は、夫を探す道中、猿引きの猿の芸を楽しんだ後、薪取りの老人に出会います。
佐辺さん「もし、お尋ねになられる森川の子のことだが」
この老人から、川満香多（こうた）さん演じる森川ぬ子の消息を聞き、花を売って生計を立てる夫と出会います。
川満さん演じる森川ぬ子「（日々の生活のため）きょうは東方の村々に（花を売りに）いくのだ」
この最後の舞台で、金城さんは、特別な雰囲気を感じとっていました
金城真次さん「香多さんたちも佐辺さんたちもみんな熱いんですよ今日は。なんか熱いものを感じるんですよ」「皆も多分最後というものがあったんだと思いますよ」
そして夫婦は運命の再会へ・・・。
落ちぶれた自分の姿を見られることを恥じる森川ぬ子でしたが、家族で再び生きることを誓い。物語は終了します。
佐辺良和さん「ただ皆さんに感謝です」「舞台が無事に終えたこと研修が無事に終えたこと」「いろいろ支えてくれた方々への感謝です」
佐辺さんアンコール後の挨拶「くりからがる始まいんでぃうむとぉーいびん研修うてぃ学ばること肝に
うむ染みてぃ沖縄の肝ぐくる大切にくりからうみはまてぃけーやんでぃうむとーいびーくとぅぐすーようなまからぬ後んご指導ゆたしくお願げーさびら」
研修生と言えど、その前途が、約束されているわけではありません。芸能だけで生計を立てるには、厳しい現実も横たわっています。それでも彼らは「夢」を語ります。
川満さん「僕出身が宮古なのでやっぱり宮古までのばしたいですね。組踊の普及させたいまた、島独特とかも作っていければなと思っています」
仲村さん「正直厳しいではありますね」「やはり今、現状でどうしてもこれだけで生活というのは出来ないものですから。いつかはそれが出来るように目指して自分達は若い世代が頑張らなければいけないんじゃないかなと思っています」
金城真次さん「もう逃げられませんよここまできたら」「好きだからやるんですよね」
さて、研修の中身は本当に充実したものになっているのですが、後継者を本気で育てるための金銭的なバックアップも求められています。研修生には毎月、奨励費という形で1ヶ月1万4000円が支払われて
いますが、燃料代程度の状況です。
せっかく人間国宝の方々から学んだ研修生が、生活が成り立たなくて、将来断念するということが起きないためにも、制度の充実が求められます
第2期研修生は4月から。今度は9人の若者達が芸を磨きます。以上、Ｑリポートでした。