今回の少女暴行事件で、沖縄市が町おこしのために作ったばかりのミュージックタウンが事件現場の一つとなったことは、地元に大きな衝撃を与えています。まだ外出禁止令が出されていなかった先週末のコザの街。そして、事件に揺れる地域の複雑な思いを緊急取材しました。実近記者です。
これは事件当日の夜、コザ・ミュージックタウンで開催された専門学校のファッションショー。会場を埋め尽くす若者たち。被害者の少女もこのイベントを見ていました。イベントは午後8時に終了。その30分後、事件はここから始まります。犯人の男が被害者に声をかけたのです。
実近記者「事件は一週間前のちょうどこの時間、この場所から始まりました。隣は音楽イベントの真っ最中で、子どもや外国人を含む大勢の人の姿が見られます」
事件は、まさに普通の時間に起きたのです。
事件後、初めての週末を迎えたミュージックタウン、そしてコザゲート通り。
兵士「ノーコメント、ノーコメント」「答えられません」
関係者のほとんどは、事件について語りません。
兵士「ひどい事件だと思います」「許されないことだし、悪いことで間違ったこと。絶対起きちゃいけないこと」「事件については知りません」
近くには学習塾もあり、午後10時を過ぎても制服を着た中学生の姿が見られます。
中学生「(Q:声かけられたりとかない?)時々。(Q:そういう時は不安に感じる?)慣れてるかな、うーん」
大柄な外国人の間を塾帰りの少女たちが歩きます。基地と生きてきたコザの街の日常的な光景です。
この日はアメリカ軍のペイデイ。まるで事件などなかったかのような賑わいですが…。
元沖縄市議・玉城デニーさん「やっぱり静かですよ。普段はこんなもんじゃない」
事件を受け、緊急に開かれた地域安全推進協議会。
東門市長「やはり、どうしても今日お話したかったのは、沖縄市のミュージックタウンというところ、その前のところから連れ出されている」
今回の事件が、ミュージックタウンで起きたことは関係者に大きな衝撃を与えました。ゲート通りの隣にある、中央パークアベニュー。閉まったままのシャッターが目立ちます。ミュージックタウンは、こうした状況をなんとかしようと、地域活性化の起爆剤として去年7月にオープンしたばかり。
ゲート通りの店主「(Q:最近お客さんどうですか?外人は)ダウンよ。イラクに(戦争に)行った。もう大変よ、毎日」
店主「(Q:アメリカ人のお客さんいなくなったら、やっぱり商売に影響しますか?)必ず商売、悪くなるよ」
店主「そうですね、外人がほぼ8割くらいですね。(Q:事件受けて外出禁止令とか出たらどうですか?)そうですね、うちも売り上げのほうがちょっと響きますね」
川満勝弘さん(かっちゃん)「いくら取り締まっても、いくら教育しても、どうしようもない分子がいるのよ。だから、そういう人がいるのは初めから分かっておいて、後手後手に回ってるわけ。事件が起きてそうやるんじゃなくて。よく言うでしょ、病気になって治療するんじゃなくて、病気にならない方法というのがあるでしょ」
事件は、この街の安全をどう守るのか、大きな問いを投げかけました。
指導員「気をつけて帰ってくださいね」
金曜日の夜、地元のPTA関係者は、ゲート通り周辺で定期パトロールを行いました。
沖縄市青少年指導員・宮城勝さん「普段集まる場所でね、一番安全なところで起きたというのは、ショックですね。(Q:防犯カメラなんかも結構ありますよね?)中のほうにはあるんですけどね、外のほうにはまだないんですよ。これを今、考えているとか言ってますけど、やはり必要だと思いますね」
いま地元は、新たな防犯対策を模索しています。
岸田沖縄担当大臣「防犯カメラというのは、これは新しいアイデアではないかという風に思いますし」
ミュージックタウンには、すでに複数の防犯カメラがあります。私たちは事件当日の映像を、確認させてもらいました。
実近記者「しかし、現場に一番近いカメラにも容疑者が少女に声をかけるシーンは映っていませんでした。なぜなら、その現場はまさに防犯カメラの死角になっていたのです」
通りへの防犯カメラの設置はこれまでにも議論がありましたが、プライバシーの問題で立ち消えになった経緯があります。県内では北谷町が、2004年に自治体としては初めて町営駐車場に14台の防犯カメラを設置。年間10件起きていた犯罪は、3件に激減しました。しかし、市街地への設置には疑問の声もあります。
住民「それは反対ですね。防犯カメラがあったって、事件はなくならないと思います。基地ある限りは」
沖縄市自治会長協議会・大城信男会長「活性化も必要だし、そしてまた子どもたちも守らないといけない。向こうが粛正するだろうと、待っていたのではどうしようもない。それをすすめながら、また私たちが何をやるべきかというのをね。簡単にはできない課題だと思うんだけども、できないから放っておくというのじゃなくて、やっぱり何らかの形が見出せればいいのかなと思っています」
自由と安全をどう確保するのか、音楽の街コザはいま揺れています。
外出禁止令は、あくまでも一時的なものです。安全な街づくり、決して地域だけでなく、県民全体で考える必要があります。