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兵士たちの掛け声は、もはや雄たけびに変わっています。静かな住宅街に異様な声が響いています

先週、航空機の騒音に悩まされている普天間基地周辺の住民らが、国などを訴えている普天間爆音訴訟が結審を迎えました。しかし、いま基地周辺では航空機の爆音だけでなく、さらに住宅地特有のいくつかの問題を指摘する声が高まっています。SACO合意から11年、未だ動かぬ基地の現状を取材しました。実近記者です。

5年を経て、先週ようやく結審した普天間爆音訴訟。判決は今年6月ですが、原告たちは爆音だけではない、特に最近顕著になってきた、基地被害の実態を語りました。

原告「私は爆音だけじゃない、臭いも嫌だし」「音だけじゃなくて、空気の汚れ、汚染という面でも迷惑をこうむっていると思います」「だって息止めるわけにいかないし、体にもつくだろうし、洋服にもつくだろうし」

原告たちが指摘する臭いとは?こちらは、普天間基地のすぐ横に立つマンション。

住人「エンジンかけた時のアイドリング中の臭いなんですけど、けっこう、というより、かなりします」「すごく臭いがしますし、部屋の中にまで入ってきます。すごい、悪臭ですね」「臭いありますよ。ガソリン、排気ガスみたいな臭いがね。すごいです」

住人たちが口々に指摘するのは、航空機からの悪臭。普天間基地は住宅地のど真ん中に位置します。さらにその中でも上大謝名・真栄原地区は滑走路に異常に近いエリア。冬は北風のため、航空機は北向けに離陸します。航空機が頻繁にエンジン調整を行うのは、画面の赤いポイント。そしてエンジン調整や、離陸の際に出される排ガスは北風に乗り、冬場のこの時期、まさに住宅地を直撃するのです。

実際に宜野湾市に悪臭の苦情が寄せられるようになったのは2年前から。問題の地域には保育園もあります。

実近記者「宜野湾市の真栄原地区です。そしてそのすぐ横に隣接しているのが、普天間基地です。はたして問題となっているエンジン調整とはどのようなものなのでしょうか。現在午前7時30分です。けたたましい騒音とともにKC130が姿を現しました」

静寂を破るプロペラの回転音。ゆっくりと滑走路に向かいます。コックピットの計器類まで見えてしまうほどの至近距離。住宅との距離は100メートルをきっています。

実近記者「KC130、まさに住宅地の真横でエンジン調整を行っています。ものすごい音をたてています」

この日も強い北風が吹いています。そして、取材ポイントに異様な臭いが漂ってきました。

実近記者「風下にいますと、飛行機の燃料のような臭いがします。生暖かい風を感じます」

そして住宅地を背に離陸していきます。早朝から、次々と離陸するKC130。こちらは小型のジェット機。小さいといえども、ジェットエンジンを全開にすると…。

実近記者「ちょうど今離陸していったんですが、その時に吹き上げたエンジンのせいでしょうか、鼻をつくようなオイルの臭いがします」

エンジン調整は、まだ夜も明けないうちから始まり、長いときには1時間にも及ぶといいます。さらに、悪臭の原因と考えられる航空機の排ガスはこんな被害ももたらしています。

住人「これ全部煤煙なんです。だから戸を開けておくことは、まずこっちは無理なんです」

基地に隣接するこちらの住宅。掃除をしてもすぐに家中が煤だらけになるというのです。

住人「それと台所ね。開けておくとお椀とかそういうの全部黒くなります。煤煙の被害と臭いだけは大変です」

ここ数年、普天間基地では大型輸送機や戦闘機の飛来も頻繁になっていて、それが排ガス問題に拍車をかけていると見られています。

そして私たちは今回、住宅地に位置する基地ゆえのもう一つの基地被害ついて話を聞くことができました。

原告女性「怖いですよ。聞いたことあります?6時くらいからやるんですよ」「足音と掛け声とヒューという声。それで目が覚めるんです」

その訓練とは―。

実近記者「現在まだあたりも静かな午前6時半です。兵士たちが住宅街のすぐ横で、大きな掛け声を出しながら行進を始めています」

朝の静寂を破る兵士たちの掛け声。兵士の数およそ100人。いくつかの部隊が、競うように声を張り上げます。

実近記者「兵士たちの掛け声は、もはや雄叫びに変わっています。静かな住宅街に異様な声が響いています」

宜野湾市の伊波市長は、これらの問題の背景にはここ数年、イラク戦争を受けたアメリカ軍の訓練の激化が影響していると指摘します。

伊波市長「市民の負担感がものすごく大きくなっているという感じがします。飛行もかなり低空飛行で、さらにエンジンも全開でといいますか。実践的な訓練を普天間の飛行場の上、私たちの住宅地の上で行っていると」

宜野湾市では、去年から沖縄防衛局に悪臭被害の実態調査をするよう申し入れていて、近く合同で初めての本格的な調査に乗り出す方針です。

悪臭被害はもちろん、このかけ声の問題について、これまでに宜野湾市は、アメリカ軍に対策を講じるよう申し入れているんですが、現状は全く変わっていないようです。住宅街の真ん中にあるだけに、本当に様々な問題が次々と出てきます。抜本的解決は、やはり基地の早期返還しかありません。