岸本記者「この凄まじい実弾演習の音。金武町伊芸区から目と鼻の先にある演習場をこの集落から離れた場所に移す計画が、アメリカ軍の都合で一年半も遅れることになってしまったのです」
金武町・儀武町長「納得できませんね。その当時、私は大きな山が動いたという表現をしましたが」
嶺井カメラマン「実弾を使った射撃訓練をしているのが確認できます」
金武町伊芸区からわずか300メートルという至近距離で実弾射撃訓練が始まったのは今から３年前。訓練に使うライフルの射程距離は1100メートル。伊芸区に十分届く距離です。
伊芸区民「本当に愕然として、我々の力では無力かなと悲しく思っている」
実弾射撃訓練を巡る区民の苦悩は実に半世紀以上も続いています。終戦後、キャンプハンセンには伊芸区に隣接するだけでも６つのレンジが建設。
この演習場から流れ弾が飛んでくる事故が相次ぎ、人身事故も発生。
こうした過去の事故を無視し、再びレンジ４での訓練を始めたことに、県民は超党派で抗議の声を挙げようと県民大会を開催。区民は一年以上に渡って毎日、キャンプハンセンのゲート前に立ち抗議運動を続けました。
伊芸区民「アメリカ人に（訓練で実弾を）撃たれて、こんなに抗議をしても勝ち目はないのかなと。これからも戦っていきたいと思う」「政府の方も、米軍に対してはっきりと物を申して頂きたいと」
この強い地元の反対を受け、日米両政府は至近距離にあるレンジ４訓練場を集落から離れた場所へ、ことし３月までに移設することについに合意。住民運動が政府という大きな山を動かした瞬間でした。
伊芸区・池原政文区長「本当に期待を裏切られたと非常に憤っております」
政府は今月初めになって、訓練場の移転を来年10月まで延期すると地元に説明。その理由は、移設工事のためにアメリカ軍の射撃訓練を停止できないというものでした。
金武町・儀武町長「訓練のことを前もって分かっているでしょうし、そういったことに対して、この２年半、何をしていたのかという気持ちのほうが強いですね」
金武町議会・知名議員「金武町民を愚弄した、人権感覚の欠落した顕著な差別行為と断ぜざるを得ない」
金武町議会は、訓練場の即時閉鎖を求める抗議決議を全会一致で可決。そして今週月曜日、議員全員で沖縄防衛局を訪れ、怒りの声を直接伝えたのです。
金武町議会・松田善政議長「沖縄本島で実弾を撃っているのは金武町域ですよ、はっきりいって。我々は当事者ですから、常に相談があってしかるべきだったんですよ」
金武町議「（実弾射撃の）現場を隔離してくださいと。それだって全然やれてないじゃないですか。そういうこともしない。ということは、我々は皆さんの言ってることは何一つ信用できないですよ」
沖縄防衛局「安全対策について、くれぐれも万全を期すように米軍側に対しても働きかけていきたいと思います。以上、防衛局の考え方としては以上であります」
沖縄の本土復帰後、24年続いた県道104号線超えの実弾射撃演習。そして海兵隊の上陸訓練に主に使われてきたギンバル訓練場の同じ町内への移設。また、来月にも始まるアメリカ軍と自衛隊との共同訓練と、これまで多くの基地負担を強いられている金武町。
金武町・儀武町長「金武町はとても基地行政に協力したり、いろんな対応も決断もやってるつもりではあるが、そういった裏切られた感というか、強い憤りを覚えるしかない」
金武町にはアメリカ軍再編による機能の強化ばかりが進み、負担の軽減は後回しにされている沖縄の縮図があります。
移設３ヶ月前の今の段階になって突然延期といわれれば怒るのも無理はないですよね。
岸本記者「今回は伊芸区に最も近いレンジ４の訓練場について取り上げましたが、実は伊芸区では３つの訓練場の建設が同時に進んでいます。このレンジ４をこの山側のレンジ16の傍に移す計画が来年10月に遅れることになったんですが、元々ここにあった訓練場をこのＢ地区に移す計画もずれ込み、またこのＢ地区からＡ地区に移す計画も今進んでいるんです」
玉突き式に移設するから、新しい訓練場ができないと動かせないということですか？
岸本記者「そうです。アメリカ軍は伊芸区民や日本政府の要求を呑むという形をとりながら、実は新しい機能を備えた高機能の訓練場を結果的に３つも手に入れることになるんです。しかも、ことし３月には訓練場の移設は実現できないのに、日米共同訓練は予定通り始まる予定なんですね。また、もし、年度末の３月に合同訓練が始まらなかったら、再編交付金の１億2000万円も金武町に入らなくなると」
儀武町長は、基地行政に協力してきたと言っていましたが、強制的に協力させられてきたと言ってもいいですよね。
岸本記者「まさに自治体の足元を見た、あまりにも強引な政府のやり方だと思います」