県は先週、普天間基地の移設に向けて、政府が提出した環境影響評価の方法書に対する住民意見を正式に受理しました。
これまで政府から出された方法書に対し、条件が整っていないとして、保留の立場をとってきた中での県の方針転換。この方法書の受理に至るまでにはどんな政府との駆け引きや県の思惑があったのでしょうか?岸本記者です。
ことし1月以降、政府と県のこう着状態が続き、9ヶ月も開催されなかった普天間移設協議会。
仲井真知事「防衛省が自分の考えを押し付けるため、それだけのためにやってるいる。だからこういう協議会は意味がないということで、僕らは出ない」
日米政府が合意した移設計画だけを押し付ける防衛省に不快感を顕わにする仲井真知事。県と防衛省の対立は、ことし8月、環境影響評価の方法書を突然、県庁に送付された時に決定的になりました。
仲里副知事「県としては今、前提条件が整わない中で、方法書を受理できないという姿勢です」
県の前提条件とは名護市が求めている滑走路の沖合い移動と、仲井真知事の公約である普天間基地の3年以内の閉鎖です。
しかし防衛省は、この地元の要望に全く対応策を示さないまま、方法書の手続きを進め、先週、住民意見をまとめたものを県に提出しました。沖縄大学の桜井学長は、県の前提条件以前に、政府が提出した方法書は環境影響評価の基準を満たしていないと訴えます
沖縄大学・桜井国俊学長「ここでどういう機種を飛ばすのか、全然書いていない。どういうルートで飛ぶのか、どうやら海の上だけじゃない。その辺が全然書いてない。これではアセスができる訳がない。アセスをやっているかのように見せて、環境上問題がないかのように言うから、我々国民は騙される。そんな騙しは許されない」
また、アメリカ国防総省などを相手に、自然保護団体が国の天然記念物ジュゴンの保護を訴えている裁判で、アメリカ政府は辺野古への新基地に、普天間基地にはない航空機の弾薬の装弾場の建設を日米合意していること、200メートルを超える岸壁の建設を要求していることを公文書で明らかにしました。
こうした基地機能の強化はいずれも方法書には記されていません。仲井真知事は先週、この方法書を正式に受理するとこれまでの態度を変化させたのです。
仲井真知事「これ以上、方法書の受け取りを保留し、知事意見を述べないことは異議なしととらえられ、地域の環境保全に責任を持つという私の立場が損なわれることになると考えます」
しかし、自衛隊まで動員して事前調査を進め、地元の声にまったく耳を貸さない防衛省の姿勢に強い不満を持っています。
仲井真知事「これは何度も申し上げているが、海ガメの産卵地が全滅します、これは地図上はっきりしてるんですが、防衛省は言わない。そして文化財が2つ、貝塚がある。これが全部だめになる。そしてやっぱり音、防衛省が持ってくる数字。全く信用していません。」
深まる県と防衛省の溝。政府もこの状態のままでは、以前の沖合い計画と同じようにいつか破綻することを懸念しています。
内閣府・岸田沖縄担当大臣「(移設計画に対する)今の方針、基本は我々は変わっていないと思ってはいます。誰が主催するのがいいのか、どういった会議の持ち方をするのが、より多くの皆様の方々に忌憚のない意見を戦わしていただける雰囲気を作ることができるのか等々、今検討しているところです」
普天間の移設問題変わらない状況が続いていますね。仲井真知事の就任から一年近くになりますが、全く前に進んでいないと言ってもいいくらいです。
岸本記者「12月7日、4回目の普天間移設協議会が10ヶ月ぶりに開かれます。この協議会、これまでは防衛省と内閣府が共同で主催していたんですが、県と防衛省は対立関係にありますし、このままでは話が前に進まないということで、次の協議会から官邸の主催に格上げされます。これは知事が直接、官房長官に要請したことでもあった。この場所で、どこまで地元の要求に合理性があるのかを仲井真知事が主張できるかがポイントになってきます」
知事はきょう福田総理とも初めて会っていますよね。
岸本記者「急きょ、福田総理に呼ばれたという形ですが、総理としては来月中旬の訪米の前に、普天間の移設問題の落としどころを直接探っておきたいという気持ちが強かったんだと思います。仲井真知事は環境影響評価という法律の手続きの中で、いわば相手の土俵に乗って県の要求を通すという決断をした訳ですから、次の官邸が主催する協議会でも、基地建設を急ぐ政府のペースに乗るような安易な妥協はしてほしくないと思います。