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沖縄の伝統楽器「三線」。三線の愛好家はとても多いですが、こういう演奏ができる人はめったにいません。きょうは半身マヒの男性が奏でる音色を紹介します。

比嘉盛栄さん、5年前に脳出血を発症して、右半身が麻痺する後遺症が残りました。現在は週に2回、リハビリに通っています。

流れるような旋律。実は比嘉さん、左手だけで三線を弾いているのです。三線を支えているのも、弦をはじいているのも左手です。

脳出血を起した頃、比嘉さんはちょうど三線のコンクールに挑戦するため、連日、根を詰めて練習を重ねていました。運び込まれた病院では、もう三線はやらないと言っていたといいます。

比嘉さん「(倒れたのは三線の)せいにしていた。毎日練習、練習だから、試験の。これでいつもイライラして」

一時は三線に触れようともしなかった比嘉さん。しかし、比嘉さんの心から、その音色が消える事はありませんでした。

比嘉さん「楽しい時も悲しい時も、これつかまえたらちゃんと伝わってくるからよ。沖縄の人間は三線がなくっちゃだめじゃないかね」

床の間のこの場所が、うちでの比嘉さんの指定席。柱で体を支えて三線を弾きます。なんとかもう一度三線を弾きたいという執念のような思いが左手だけの演奏を思いつかせたのです

教師免許を持っている比嘉さんとはいえ、左手だけで弾くのはさすがに難しく、納得のいく音が出るようになるまで2年もかかったと言います。その気持ちを支えたのは、病気になっても一生懸命に生きる姿を孫達に伝えたいという思いでした。

比嘉さん「我慢せんとよ。僕は人には負けても自分には負けたくない。自分に負けたら人間は最後だから」

比嘉さんはリハビリクリニックの仲間に、時々その腕前を披露しています。

「もうびっくりして、毛が逆立ちしてよ。あんなに片一方の手で、あんなに歌も上手だし」「えらいよ。こんな方もいらっしゃるんだねぇって、びっくりしました」「自分もうんと勉強してやろうという気持ちが出ました」

それは比嘉さんのリハビリを支えるスタッフも一緒です。

スタッフ「感動しました。震えました。すごい前向きだなと思ったので、私もそういう風に生きれたらいいのかなと、尊敬しています」

比嘉さん「三線を弾くと何もかも忘れてしまう。この三線の音、自分の気持ちに溶けてしまうからよ。両手で弾くのと対等に弾けるように頑張ろうと思っている」

比嘉さんは自分が誰かの励みになれば、どこででも演奏を披露したいと話し、ことし3月には山口県で演奏をしています。それを支えているのが、家族に病気でも前向きに生きる事の大切さを伝えたいという思いだそうです。