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名護市辺野古の基地建設については環境アセスの方法書がでて、現在、公告縦覧されていますが、それも明日までです。

方法書というのは環境アセスの最初の手続き、本調査に入る前に、事業の内容やアセスの進め方を公開し意見を募るものですが、今回知事は受け取りを拒否していますから、市民の意見が唯一の意見になる可能性もあります。

では今回の方法書、何が問題なのか、これで本当に自然は守れるのでしょうか。

名護市辺野古の住宅街にあるビルの一室。ここで方法書の縦覧が行われています。この日も含め、訪問者はほとんどゼロ。従来、役所など公共の場所が会場でしたが、今回は県知事が受け取りを拒否しているため、ホテルや民間アパートの一室で行われる異例な事態になっています

WWFジャパン・花輪伸一さん「縦覧場所は5箇所しかない。分厚いもので、そこに行ってみても理解しがたい」

環境アセスの基本である「情報公開」と「住民との合意形成」がなおざりにされていると、専門家や市民団体などが各地で声を上げています。

花輪さん「軍事演習が行われた場合、ここでアジサシは暮らせるのか、それを予測しなければならない。そういうことを一切書かずに繁殖調査、移動調査をしますとしか書かれていない。方法書としては形を成していない」

粕谷俊雄さん「(ジュゴン調査で)設置する機器の特性がわからないと評価できない。誠意に欠けた方法書だと思います」

方法書で新たに明らかになったこともあります。飛行場本体の工事とは別に、埋め立てで作業ヤードを作ることがわかりました。しかし、この大浦湾の奥の埋め立て部分とそれに続く浚渫工事の部分には、貴重な動植物が生息しています。

ここでしか生存が確認されていない「歩くサンゴ」。川と海が接する泥場にすむスイショウガイに、キクメイシモドキというサンゴがくっついたもの。県内では泥場のヘドロ化が進み、スイショウガイ自体が姿を消しているのです。

砂地に生息するトウアカクマノミ。クマノミ類の中では簡単には見らない人気種ですが、この場所も埋め立て地の真下になってしまいます。

そして、浚渫工事で削られる運命にあるのが「クマノミ城」。見渡す限りイソギンチャクに覆われた岩に、数百匹のハマクマノミが乱舞しています。大浦湾は日本にいるクマノミ6種類すべてが生息しているとても貴重な場所になっています。

ディズニー映画「ニモ」でおなじみのカクレクマノミ。白い線が美しいハナビラクマノミ。これらのクマノミはユビエダハマサンゴの大群落に住み着いています。

魚だけではなく、エビやクブシミなど、多くの生き物のゆりかごになっているこのユビエダハマサンゴの大群落。ここも、浚渫工事で削理取られる予定です。

先週、またひとつ方法書が見落としているサンゴの大群落が見つかりました。石垣市白保で空港建設を止めるほどの影響力を発揮した貴重なアオサンゴの大群落が、なんと大浦湾にも形成されていたのです。

しかし、方法書ではここはサンゴの被度は5%以下、ほとんど何もないことになっています。

すでに調査が繰り返されているジュゴンについてもさらなる調査項目が並んでいるだけで、基地建設の影響からどう守るのかは書かれていません。

さらに、建設地に最も近い名護市辺野古の漁港は作業ヤードとして両脇が埋め立てられます。

キャンプシュワブとの境界にある有刺鉄線が象徴的なこの海岸は辺野古区民に残された最後の砂浜。ハーリーの会場だったこの浜もなくなります。

辺野古の漁師は、この埋め立てをどう思っているのでしょうか?

漁師「これは、国からのあれですか?(Q:ここを埋めちゃったら、漁は困りませんか?)困らんよ。新しく港作ってくれれば」

「埋めてもいい」、「ハーリーは港でもやれる」・・・予想に反して、反対意見は聞かれませんでした。

モズク漁を営んでいる宜志富さんは、若手で最も熱心な猟師です。

宜志富紹司さん「埋められてもいい、じゃない。そういってしまえば終わり。できるなら、埋め立てたくはない。じゃあどうしたらいいのか。知事が、市長が、一回でも海人集めて話したことある?一回もないよ。何で話が進んでから『はいこうしますよ』って持ってくるの?『そうしたいんだけど』という意見ではない。頭にきているから、海人は『あ、そうなので』話は終わるわけよ」

辺野古では当初、ほとんどの区民が基地の移設に反対してきました。しかし、名護市長が県知事が政治判断をする中、条件闘争に入るしかなかったのです。

名護漁港・古波蔵廣組合長「じゃあ、反対をずっと貫いていけばどうなるのか。やられっぱなしになるのか。区の有志としてはそうはいかんと。負の遺産を利の遺産に変えようというのが統一した考え方です。(Q:この図はいつ見ましたか?)これは方法書を出す前に、私は防衛省から説明を受けました。やるんであれば、漁港も対岸もみんな埋めてくださいと。宅地造成、インフラはしっかり整備してくれと言うのが私の意見です」

漁協としては海を埋めないでと要望する立場ですが、名護市が沖合いにずらすよう求めているのと食い違うため、意見書の提出は見送る方針です。

宜志富さん「(Q:27日まで、誰でも意見を出せる)出さんよ。もうどっちみち変わらんよ。出したところで、損だよ。考えるのすら、面白くないわ」

環境に極力影響を与えないような事業の進め方を住民に提示する環境アセス。でも住民も、生き物たちも、これまでどおりには生きられない未来が待っていることは間違いないようです。

公告縦覧は明日まで。そしてこの意見書の提出は27日、あと二週間あります。

何を書いても・・・と無力感に襲われるのも確かにありますが、見直しを迫る権利が沖縄だけでなく、全国民にあるわけですから、意見書提出のチャンスを生かしたいものです。