名護市東海岸。ここには自然の海岸線がまだ残っていて、ジュゴンの餌の海草が群生しています。
キャンプ・シュワブはその一角にあり、今、この海では基地建設の調査が進んでいます。本格的な工事に入れば、もうジュゴンの姿は永遠に消えてしまうかもしれない。そんな危惧を胸に、今のうちにその貴重な姿を多くの人にみてもらおうと、特別の撮影プロジェクトが結成されました。
ベテランダイバー・棚原さん、ジュゴンの保護区を目指す東恩納琢磨さん。地元で何度もジュゴンを見ている久志実さんと翁長丈さん。そしてQABの撮影チームです。
久志船長「俺が見たのは4年前。大浦湾側で、1メートルくらいだった。サザエを取りに行って、リーフに渡ろうとして、何かナーって見てたらそれがジュゴンだった」
上空ではQABのカメラマンがジュゴンの発見に当たります。2隻の船は所定の場所で待機。緊張が高まります。
無線「現在、ジュゴンの親子2頭を大浦湾の入り口で発見しています。二頭です!」
三上記者「すごい!ジュゴンが二頭いたって!」
嶺井カメラマン「キャンプシュワブ沖に、親子でしょうか。二頭のジュゴンがゆっくりと泳いでいるのが確認できます」
東恩納さん「いるって!2頭って!親子って!。2頭って言ってましたよね!」
無線「親子連れなので、追跡は不可能だと思います」
三上記者「ここで待ってていいですか」
初日は水中撮影はあきらめましたが、みんな大喜びです。
三上記者「親子が生きててよかったね!」
ところが。空からの映像をよく分析してみると2頭のジュゴンはどうやらカップルで、交尾行動らしい動きをしています。
大きい方が雄とみられ、胸鰭でメスを抱えるようにしています。メスはおなかを上にして向き合っています。また、求愛行動と見られる動きを繰り返していて、二頭は観察していた1時間半の間、ほとんどくっついた状態。ひょっとして、この海域で、赤ちゃんの誕生が見られるのでしょうか?
美ら海水族館では、ジュゴンと同じ海牛目のマナティーの繁殖に日本で始めて成功しています。また、短期間ですが、ジュゴンの飼育経験もある専門家にみていただきました。
内田館長「大きめのほうがオスで、小さいほうがメスだろうなという感じはする。ぱっと腹合わせになっているところは、やっぱり交尾行動だと思います」
三上記者「こういう野生のジュゴンの交尾が撮影されたことは?」
内田館長「ないはずです。私の知る限り、出産もないはずです。世界的にも。絶滅寸前で、性成熟した大きな雌雄がいなくなってしまい、繁殖して新生児が生まれる可能性がないと。私なんかそう思っていました。こういう交尾行動らしきものが確認できたっていうことは、すごく意味がある」
初日から大きな収穫があり、活気付くメンバー。2日目は、警戒心がそれほど強くない、1頭で行動するジュゴンを探します。
三上記者「ジュゴン撮影二日目!梅雨も明けてお天気は快晴。波も穏やかです。今日こそ水の中でジュゴンを撮影したいと思います」
ヘリコプターも現場海域に到着。早速!発見です!
無線「30メートル先にいます!」
三上記者「あーいたいたいた!見えた!」
長田勇・水中カメラマン「ここからもぐりましょうか!。いたいた」
三上記者「2時の方向!もぐってください!亀と遊んでいます」
なんと!ジュゴンは海がめと遊んでいました。単体で過ごすジュゴンにとって、貴重な友達のようです。
そして・・待機していた船に、ジュゴンが自ら向かってきました!撮影のチャンスです!
画面左側。ゆったりと水中を行くジュゴンの姿が見えてきました。大きさはおよそ3メートル弱。大人のジュゴンです。寿命70歳。2年間も授乳をしながら大事に育てるなど、人間によく似たライフサイクルのジュゴン。その幻の姿をついに、水中で捉えました!
ベテランダイバー・棚原さんはおよそ10メートルまで接近するチャンスに恵まれました!
三上記者「すごいね!撮れたんですか!どのくらいの大きさ?」
棚原さん「このくらい!」
東恩納さん「10メートルくらい!俺の横を通り過ぎていった」
日本で最後のジュゴンのいる海。人間が自ら手放しつつある豊かな海が、まだここにありました。ジュゴンに出会ったメンバーはこの海を誇りたい気持ちと、だからこそ守るんだという決心を新たにしていました。
久志さん「とにかくみんなにみてほしい。この美しい海に、絶滅の危機のあるジュゴンが棲んでいるということ、みんなに感じてほしい」