沖縄は大小160の島々から成り立っていますが、このうち本島をのぞいて、39の人が住んでいる島があります。暮らしがあれば、当然予期せぬケガや病に襲われることもありますが、医者がいない島は半分近くの16にも上ります。また、離島だけではなく本島の過疎地域でも事態は深刻です。この状況を少しでも改善しようと活躍する民間のドクターヘリの姿と診療所休止で揺れる安田区からの声をお伝えします。棚原記者です。
浦添総合病院救急総合診療部・斉藤 学部長「いつどこでも、どんな人がいようが、同じ医療が受けられるのが理想だし、そうしていかなければいけないと思う」
救急総合診療部長、斉藤 学医師。斉藤さんが勤める浦添総合病院は県内に二つある救急救命センターの一つとして地域の医療を支えているが、今年さらに県の指定を受けた「へき医療拠点病院」として、へき地における医療の確保などにも積極的に関わっている。
病院は2年前、全国初の民間のドクターヘリ通称「U-PITS」を導入した。
離島やへき地における現場移送の時間の遅れは、患者の命や後遺症など、様々な問題を引き起こす。
全国ではすでに11カ所で国や都道府県の支援を受けたドクターヘリが活躍しているが、県では今だに導入されていない。
県は、この補完事業として陸上自衛隊や海上保安庁と協定を結んだ救急搬送を行っており、離島の救急要請には応えられているという認識だ。
ところが、この場合、要請から出動まで煩雑な手続きを用し、現場到着までに片道2時間。往復では4時間あまりもかかる場合もあることから、一刻を争う救急の現場では命取りの場合もある。
それに比べ「U-PITS」がカバーするエリアは読谷村のヘリポートを中心に半径100キロ。一番遠い久米島でも片道の所要時間は30分だ。医師と看護師を乗せたヘリは、要請を受けてわずか5分で出動出来る体制も作り上げている。
知念茂夫区長「都会であれば、腹が痛ければ10分さえあればすぐ民間医療とかそういうのがあるが、こっちではそういうこともできない」
国頭村安田区。200人余りの住人が暮らす集落は今、医療格差の象徴とも言える状況に陥っている。今年4月、70年以上にわたり安田区の人々の命を守ってきた診療所が突然休止されたのだ。
知念区長「医療は高度化していくけど、診療所はなくして。高度医療とは何を診察していくのか。へき地の住民も同じ医療を受ける権利を持っているんだから」
現在、月に一度の巡回診療が行われているが区民は納得していない。区民との話し合いを十分に行わない中で閉鎖した県の姿勢が大きな不信感として横たわっている。巡回診療を受け入れれば、県の休止を認めたと思われるのを怖れているのだ。
自衛手段として、安田区は独自で診療所の医者探しも検討していて、浦添総合病院にも医師の派遣を打診している。
安田区から病院のある辺土名までは、曲がりくねった林道を車で片道40分近くもかかる。ヘリではその半分だ。しかし、診療所が近くにあるだけで、区民の安心感は大きく変わると知念区長は休止を嘆く。
知念区長「県民のみなさんも、そこにいる人たちがどういうふうに生活しているかということを、都会の方が一人でも多く考えてくれれば、県の考え方も変わってくるんじゃないか」
斉藤先生「やっぱり医療格差があってはいけないと常に感じるようになりました」
安田の診療所など、地域の医療拠点の存続は救急ヘリにとっても重要な存在。地域の医者との連携は、患者の容態を把握することに欠かせないからだ。
斉藤先生「昔聞いた話ですけど、畑の中でおじいさんが倒れていた。離島のドクターが畑まで行って、器官送管し、心臓マッサージをしながら、電話を肩で抑えながら自衛隊を要請した。両手はふさがっているのに、自衛隊の書類を書かなければいけない。そういったことがあったらしいので、それはもうあってはならいことであるし、U-PITSだったら書類は後でいいので、僕達がすぐ行きますと。一報を、僕達に電話をくれれば、すぐに行ける体制なので」
仲井間知事は選挙公約の中でドクターヘリの導入やへき地医療支援を謳っていますが、目に見える進展もないことから不満の声も上がっていて、早急な対応が求められています。