アスリートの限界に挑む男性が登場です。新聞などでよく名前を目にしたことがあるのではないかと思いますが、パワーリフティングの伊差川浩之さんは、現役の世界チャンピオン。今月開かれた世界大会では、史上初の53歳という年齢で優勝、快挙を達成しました!
「肉体の年齢的限界とは?」
どのスポーツ選手も必ず行き当たるこの大きなテーマに挑む男こそ、パワーリフティングの世界チャンピオン伊差川浩之さんだ。
伊差川さん「限界を作るとすれば、その人自身の中にあると思う。私の中でベンチプレスに関しては限界を作っていません」
身長152センチ、体重56キロと小柄ながら、体脂肪率8%の、その鍛え上げられた肉体は全身まさに筋肉の鎧で出来ている。
ちなみに「パワーリフティング」とは、バーベルを肩にかついで行う「スクワット」と床の上に置いたバーベルを、引き挙げる「デッドリフト」、そして「ベンチプレス」の3種目を体重別で争う競技だ。
このパワーリフティング34年の競技生活の中で、伊差川選手は全日本選手権で優勝25回、さらに世界選手権でも優勝8回を誇り、王座に君臨し続けている。
伊差川さん「やってやろうという気持ちだけがあって、幸いにもこうして結果を残すことができました」
さらに驚くべきはその年齢だ。一般的にアスリートの肉体的ピークは20代から30代前半までとされるが、伊差川選手は53歳。
今年6月の全日本選手権において、スクワットで217.5キロ、デッドリフトで237.5キロ、そして得意のベンチプレスでは177.5キロ、トータル632.5キロを持ち上げ、自らが20代の時に打ち立てた記録を塗り替えるとともに、ほかの20代の若手選手を抑え、一般男子の日本新記録を樹立してしまったのだ!
伊差川さん「50歳代の選手が20歳代の選手と真っ向勝負をして勝てる競技はそんなにないはず。そして50歳代でも頑張ってやれば出来るということを証明している。そのへんも魅力に感じています」
普段、伊差川さんは那覇市内にある自宅でトレーナーとしても活躍しているが、本業はグラフィックデザイナー。最近では、大会のポスターや、Tシャツをデザインすることも多い。
下地亮さん「53歳になっても、周りの若い人達に負けないで記録を伸ばし続けているのは凄いと思います」
平良直樹さん「妥協しないで練習しているところがすごいと思います。パワーリフティングを学んでいるものの励みになると思います」
伊差川さんの妻、真里さんも以前は日本記録を出したほどのパワーリフターだったが、今は浩之さんを影で支える存在だ。栄養学を学ぶ真里さんは、サプリメントなど、体調管理も万全だ。
伊差川真里さん「(世界チャンピオンを)支える妻としては大変よねと言われますけれども、周りが思うほど大変ではない」
夫婦の会話「まずい顔しちゃ、ダメだよね。まずい、もういっぱい」
伊差川さん「私が今こうやって世界チャンピオンになったり、歳の割にはそれなりの筋肉や肉体を持っているのも、決して一人で作っているわけではない。特に世界選手権で12年ぶりに優勝した時も、周りのスタッフが支えてくれているんですね」
日本のパワーリフティング一般男子優勝最高年齢は今から19年前に記録した47歳。それを6歳も上回る53歳で記録を塗り替え、さらに世界の一般大会でもチャンピオンとなるなど、日本と世界の王座に君臨する伊差川浩之さん。その肉体的限界は留まることを知らない。
伊差川さん「限界はある意味では、人が作ってしまうものだと思う。自分の中で、ここで終わりだと思えば、もうそこで終わっちゃう。だけど、正直ずっとやりながら、まだ限界を感じていないですね」
小さな巨人という言葉がぴったりの伊差川さん。来月には11年ぶりの沖縄開催となるベンチプレスの全日本大会の開催に向け、役員としても選手としても準備に大忙しです。