高校を中退した生徒や不登校の生徒が高校の卒業資格を取ろうと1年に1週間だけ全国から沖縄に集まって来ます。単位制・通信制のその高校で今月、卒業式が行われました。卒業生の真夏の卒業式にかける思いを尋ねました。
今月10日、本部町にある高校で55人の卒業生を送り出す卒業式が行われました。
八洲学園大学国際高校・和田校長「今日できることは今日やって明日を迎える。明日は明日しかできないことがいっぱいできる。みなさんは卒業されたので、できる範囲がいっきに広がります」
実はこの生徒達、全国各地からやってきました。この高校は、自宅学習と1年に1週間だけのスクリーングが特徴の単位制・通信制の高校なのです。
この学校に籍を置く生徒は810人。年齢も10代から60代までと幅広く、出身地も北海道から九州・沖縄と全国各地に及んでいます。この学校を選んだ理由で最も多いのは高校中退や不登校。その他、文化やスポーツを学ぶため高校に通う時間のない人やケガでリハビリをするため学校に通えない人など理由もさまざまです。
「これはもう切って裏に止めてからやりなおしなさい。楽しようと思って長い糸つけて絡まる」
「ま、人生そんなものです・・・(笑)じゃあ、1回切ってリセットだ」
スクーリングでは、1時限につき90分の授業が朝から夜遅くまでびっしり詰まっています。午前8時20分のホームルームに始まり、最後の授業が15時限。終るのは夜の10時半です。
副島佑介さんは23歳。3ヶ月の子どもの父親です。中学校から不登校になり、高校には進学したものの、学校に通ったのは、1年生の1学期だけでした。
副島さん「18〜19くらいまで楽しかったらいいやって感じだった。シンナーがばれて、なんかごちゃごちゃあって」
そんな副島さんの気持ちを変えたのが、東京でひとり暮らしをしている祖母の姿でした。
副島さん「(おばあちゃんが一生懸命ひとり暮らしで生きていて)金があるわけじゃないし、でも一生懸命生活しているのに、自分はシンナーとかわけわからんことばかりやって。ちょっと考え直さないといけないと」
一念発起した副島さんは身障者のヘルパーの仕事しています。仕事をしながら学べる高校を探し、出逢ったのがこの学校だったのです。
和田校長「何も高校というのは義務教育ではありませんから、本来、行く行かないという自由があってもいいはず。実際には高校卒業ではないとアルバイトすらない。ほとんどのアルバイトは高校生以上と書いてある」
学校になじめず、退学した安泉さんは高校卒業の資格の重さを社会に出てから実感したひとりです。
安泉さん「印象ですよね、第一印象。学校、中卒?みたいな。今の時代に・・・。そういうのが、ちょっと嫌な感じで」
高校を辞めてすぐにこの学校に入学した安泉さん。しかし、自宅学習のシステムは思ったよりも大変で、単位がとれずに壁にぶつかったこともありました。それを乗り越えられたのは二度と自信を失いたくないという思いです。
安泉さん「ここまでやってきたのに、それ(単位を落とした)があったから辞めたとなると、本当に中退したときと一緒じゃないですか。1回落としたくらいで負けてなるものか」
卒業式の日。副島さんと安泉さんが式に臨んでいました。そしてやっと手にした卒業証書。実はふたりとも、最後の試験の結果がわかり卒業が確定したのが2時間前。だから思いもひとしおです。
安泉さん「2時間前まではどっちかわからんでドキドキでした。とれたんで、終わりよければ全てよし」
副島さん「この間生まれた子どもが大きくなったら、胸張ってお父さんは高卒だっていって、教えられとこは教えていきたいです」
卒業後は、大学や専門学校などに進学する生徒も多く、中には東大に合格した卒業生もいるそうです。ニーズが多様化している社会。本当にやりたいことをやるための選択肢のひとつとしてこういう高校があることを知っておきたいですね。