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胃の痛みや胸焼けなどを引き起こす胃潰瘍。日本人に多いこの病気は「ストレス」や「暴飲暴食」などが原因と長い間考えられてきました。

ところが胃潰瘍を発症させる、本当の犯人は別にいたのです。名前はヘリコバクター・ピロリ菌。きょうはそのピロリ菌の正体を探ります。

医学と生物学の再考の栄誉であるノーベル医学生理学賞。去年の受賞者は胃炎や胃潰瘍の原因となる「ピロリ菌」を発見した2人の研究者でした。そのひとり、西オーストラリア大学のバリー・マーシャル教授はピロリ菌についてこう説明します。

マーシャル教授「ヘリコバクター・ピロリのヘリコは、らせんと言う意味です。ピロリ菌はらせん状で1.5回転くらいしています。バクターはバクテリアという意味で、つまり『らせん菌』ということです。顕微鏡でしか見ることができないほど小さなものですが、感染している人の場合、胃壁には数百万もの細菌が付着しています」

しかしマーシャル教授の「ピロリ菌が胃にダメージを与え、胃炎や胃潰瘍になる」という主張は信じてもらえず、最後の手段として健康な自分の体を使って人体実験をしました。

マーシャル教授「あまり味は覚えていないのですが、なるべく早く飲みました。酸性のものなのでお酢のような味だった気もします。腐った肉のような臭いもしたので飲むのは楽ではありませんでした。科学的な理由で飲むということで、勇気を持って飲み込みました」

教授の主張は正しいものでした。2週間後には吐き気や痛みなど、胃炎の症状が現れたのです。国立国際医療センターの上村直実内視鏡部長は1991年から8年間にわたり1526人を追跡調査しました。

その結果、ピロリ菌に感染しいない人で胃がんになった人は誰もいませんでしたが、感染している人1246人中36人にがんができたのです。

上村教授「ピロリ菌はバクテリアですから、胃の粘膜に住み着いて、いわゆる免疫反応といって炎症を起こす。胃の粘膜が炎症を起こし、それが長く続くと、胃の粘膜がだんだん弱くなって胃潰瘍や十二指腸潰瘍ができやすくなる」

ピロリ菌に感染している日本人は2人に1人、およそ6000万人に達すると言われています。感染しているのは中高年が中心で、現在40代半ばからそれ以上の人ではおよそ7割が感染している可能性があります。

しかしピロリ菌に感染しても全ての人が病気になるわけではありません。感染とわかっても症状がない場合は、予防のために除菌治療を受けるかどうかを医師と相談することになります。

ピロリ菌の感染がわかれば薬で除菌することができます。除菌は3種類の薬を一週間飲み続けますが、胃潰瘍と十二指腸潰瘍の患者には保険が適用されます。病院にもよりますがおよそ3000円、自由診療だとおよそ1万円です。

普段食べるものの中にも、ピロリ菌の殺菌作用を持つものがあります。梅の産地で知られる和歌山の県立医科大学は、梅の成分にピロリ菌の殺菌効果がある事を突き止めました。また、ココアに含まれる遊離脂肪酸にもピロリ菌の数を減らす効果があり、この成分を通常より高めた製品も市販されています。

そして注目されているのがヨーグルト。ピロリ菌感染者に対し、LG21という乳酸菌のはいったヨーグルト90グラムを1日2回与えます。8週間食べると、30人中26人がでピロリ菌の減少が見られました。

日本では、子どものおよそ10%がピロリ菌に感染していますが、ほとんどは無症状です。

医者「これから検査をします、ピロリ菌の検査」「薬、苦くなかったかな?」

女の子「あまかった」

医師「マイナス0.4ということで陰性。お子さんにピロリ菌はいないということでした」

母親「ほっとしました。幼稚園に行く前とか、幼稚園でお腹が痛いとか言っていた時期がありましたので、検査していただいて安心しました」

医者「一般的な感染症に対する配慮として手洗いを励行する、うがいをする、そういうことを含めて日常性でか何かを全うしていただければよろしいかと思います」

ピロリ菌の感染予防も手洗いやうがい。いま流行しているインフルエンザもそうですが、感染の予防には、当たり前のことを、毎日の生活で行うということが大事なんですね。