動かぬ基地です。在日アメリカ軍の再編にむけた日米の最終合意をうけてその実行のために目標などを決める、閣議決定。一部報道ではきょう23日に閣議決定か、と報じられましたが「具体的協議を重ねたあと」とする稲嶺知事の言葉を尊重したかたちでその決定は先送りされました。
この「閣議決定」とはいったいどういうものか。そして、普天間移設をはじめとする基地問題に対し閣議決定はどのような力をもつのか、まとめました。
今月から、国会で実質的審議にはいった「教育基本法改正案」。この改正案は閣議で決定されたのちに国会に提出されました。閣議は文字通り内閣の会議のことで、総理大臣が主宰。提出される案件は内閣としての方向性や意思決定を行う「一般案件」や「国会提出案件」などがあり、それぞれの案件は「了解」や「決定」などとして処理されます。このなかで「閣議決定」は閣僚の全員一致を原則としていることから案件処理の中ではもっとも重みをもつことになるわけです。
内閣の、もっとも重い意思決定、閣議決定。現在、混迷をきわめる普天間の移設問題についても8年前に政府は方針を閣議決定しています。
99年12月、当時の岸本名護市長の移設容認をうけ、政府は普天間の代替施設を「シュワブ水域内・辺野古沿岸海域」とすることを正式に決定し、移設先である北部地域への振興策に取り組む方針もしめしました。決定の中には軍民共用空港であることが盛り込まれ、知事が受け入れの条件とした15年使用期限も「アメリカと引き続き協議する」との文言が盛り込まれました。
2002年7月29日
しかし、代替施設協議会が出した施設の工法は辺野古沖の埋め立て、滑走路は2000メートルで総工費は3300億円。ジュゴンやサンゴをはじめとする環境問題はクリアされず、そして15年使用期限も、アメリカ側と協議されることなく宙に浮いたままでした。
2002年9月県議会稲嶺知事「15年使用期限をこれまでより強く政府に訴えていくものです」
知事の答弁とはうらはらに沖縄にとって「閣議決定」の重みが揺らぎ始めたのはこの頃です。建設ありきで進む計画に対し辺野古では大きく反対運動が起こり自然環境の重要性は世界中から注目され、そして昨年10月、アメリカ軍再編の中間報告でしめされたのはシュワブ沿岸埋立て案。けっきょく政府は辺野古沖の埋め立て計画を事実上断念しました。
頭越しともいえる政府の態度に、稲嶺知事も憤りを隠しませんでした。閣議決定をもとにした従来案を、一方的に反故にしたことに説明を求める知事に対し、政府は十分な回答をかえすことなく、あまつさえ日米両政府はシュワブ沿岸を埋め立て、2本の滑走路を建設するという案で最終合意。
しかし、このあと稲嶺知事は大きく方向転換。それまでの事実上の政府との断絶状態から、あらたな「閣議決定」のために動き出します。普天間の危険性を除去するためシュワブ施設内へ暫定ヘリポートを建設するという案を打ち出し政府との協議継続をはかったのは最終合意からわずか3日後でした。
Q実質上政策転換?
稲嶺知事「まったくそうは思いません。普天間の危険性除去がいちばんなんです」
そして、政府案を基本に協議を継続していくことに、あらためて国と合意。あくまでシュワブ沿岸の埋め立ては容認できない、としながらも、「閣議決定」にむけ具体的な協議が進もうとしています。1基地の固定化を避けるため訴え続けた軍民共用・15年使用期限は暫定ヘリポート建設に置き換えられました。
稲嶺知事「米軍再編の最終報告を『起点』にまったく話の違うところではなくそれは『決まったこと』ですから、それを起点に今後とも継続的に協議をすすめることで確認した」
今回、政府と県がめざしている閣議決定。これが成されれば、前回99年の閣議決定事項は白紙となり、これまで知事が訴えてきた軍民共用空港、15年使用期限なども事実上撤回となります。国のもっとも重い決定であるはずの「閣議決定」しかしこれまでの時間の流れのなかで、それが効力を失っていくさまを、わたしたちはまざまざと見せつけられてきました。
それは取りも直さず、沖縄の負担軽といいながら地元の声を聞くことなく「閣議決定」という大義名分で私たちの頭越しに決定を下したことが原因です。閣議決定の期日ばかりが取り沙汰されるいま、本当に眼を向けなければならないのは「決定のあり方」ではないでしょうか。動かぬ基地でした。