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今年、もうすでに海水浴に行かれた方も多いと思いますが、リーフに囲まれた県内の海岸ではリーフカレントという現象で多くの水難事故が発生していることをご存知でしょうか?海岸の形や潮の満ち引きなどによって発生するリーフカレントの危険性について、実近記者が取材しました。

ヘリコプターから救助に向かう、海上保安庁のレスキュー隊員。その下には、発泡スチロールに捕まって漂流する男性。これは去年、石垣市で起きた水難事故での、救助活動の模様です。シュノーケリングをしていた観光客の男性2人が沖に流されたのです。幸い、2人は無事救助されました。

実近記者「石垣市の中心部から車でおよそ30分。こちらが去年事故があった吉原海岸です。今は満潮の時間です。浜から見るとこの海岸、何の変哲もない、普通のビーチに見えます」

しかし、実はこの海岸。県内でも有数の、水難事故 多発現場なのです。そしてその原因が、リーフカレントと呼ばれる現象です。

満潮から干潮にかけて潮が引くとき、リーフが発達した海岸ではリーフの切れ目から潮が引いていきます。そして、リーフの切れ目が少ない場所ではリーフの内側と外側の海面の高さに差が生じるため、まるで川のような強い流れが発生するのです。

この日は大潮で、満潮は午前6時半、干潮はお昼の12時半。私たちは吉原海岸の満潮から干潮までの潮の流れを見てみました。

吉原海岸は、広い範囲をリーフに囲まれていますが、一箇所だけ、リーフがV字型に切れ込んでいます。潮が引くとき、リーフ内の海水は一気にその場所に集まるのです。流れが集中すると思われる画面の赤いポイント。私たちはその場所に船を止めました。

漁師「(Q:やっぱり早いですか?)やっぱ早いですね。(潮が)走るときは僕らでも泳ぎきれない」

しばらく特に強い潮の流れは見られません。

次第に沖合いのリーフが海面に出てきました。リーフカレントが発生しそうです。そして、満潮の時刻から3時間半。シーマーカーと呼ばれる特殊な染料を船から流してみます。

実近記者「流れていきます・・・」

映像を早送りすると、流れが出てきた様子がはっきりとわかります。黄緑色のマーカーが沖に向かってどんどん流されていきます。そして、およそ50秒後には船からこれだけの距離を離れていきました。さらに20秒後には、波間に見えなくなるほど流されて行きました。

実近記者「満潮の時刻からおよそ4時間が経ちました。このように浅瀬の部分では底が見える深さになりました」

浅瀬からシーマーカーを流してみます。何もないと潮の流れは見えませんが、シーマーカーは沖に向かう一直線の流れを鮮明に浮き上がらせました。水中から見ると、その流れの速さが分かります。まさに急流の川のような勢いで流れていきます。この日の取材で最も流れの強さを感じた時間です。そして、わずか2分後、シーマーカーはリーフの切れ目を越えて、遥か沖合いに出て行きました。事故にあった海水浴客は、この流れにさらわれたのです。

去年、海上保安庁が吉原海岸で実施した同じ実験では、シーマーカーの流れがよくわかります。

それでは、リーフカレントに、人はどう流されるのでしょうか?カメラマンが海に入ります。

このときは、干潮まであと1時間半の時刻。潮はほとんど引いてしまったのか、リーフカレントの流れは先ほどの実験の時より弱くなっています。それでもカメラマンはゆっくりと船から離されていきます。カメラマンから見ると、すぐ目の前にいた船が徐々に遠ざかっていく様子が分かります。そして2分後、船から見ると、カメラマンはこれほど小さく見えるまで流されてしまいました。

11管区 高江洲調査官「干潮になる2、3時間前が一番早いと思います」「1ノット(1秒間に50センチぐらい進む速さ)ぐらいの速さになると、普通の人では逆らっては泳ぎきれない」

では万が一、リーフカレントに流されてしまった場合、どうすればよいのでしょうか?

11管区 松本専門官「慌てず、流されに逆らわず、横切る。流れと直角に泳いでいただいて、一番近いリーフ際を目指す」

県内の海岸では、多くの場所でリーフカレントが発生する可能性があります。遊泳禁止場所には近づかないことや、リーフカレントの情報を事前に把握することなど海水浴には細心の注意が必要です。

リーフカレントの本格的な調査はまだ始まったばかりで、詳しいことや県内の危険ポイントについては、海上保安庁が現在調査を進めています。とにかく、知らない海や、管理されていないビーチではむやみに海に入らないことが大切です。

リーフカレントの詳しい情報は
第11管区海上保安本部のホームページ http://www.kaiho.mlit.go.jp/11kanku/ まで